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夜間の巡視に行ったら、音もなくお部屋で転倒してた…
夜起きてきた利用者さんの介助をしてたらドーンっと聞こえた…
さっきまでスースー寝息をたててたはずの利用者さんがしれっと後ろに立ってた…
あなたにも、こんな経験ありませんか?
大事には至らなったとしても、骨折したり入院するような大事故になっていたら…
と思うとゾッとしちゃいますよね。
夜勤帯は人も少ないから仕方ない部分もあるけれど…
やっぱり自分が夜勤の日に転倒事故が起こるのはイヤなものです。
防げる事故はなんとしてでも防ぎたい!あなたもそう思いませんか?
この記事では介護施設でよくある夜間の転倒事故を防ぐためにできる対応・対策についてまとめています。
高齢者は軽く転んだだけで致命傷になる
私たち若者とはちがってほとんどの高齢者の骨には小さな穴が多くありもろい状態になっています。
そのため「え!こんな転倒で?!」と思うくらい軽い転倒でも簡単に骨が折れてしうのです。
私たちが転んでも打撲やすり傷で済むようなシュチュエーションだとしても、高齢者だと骨折してしまうくらい高齢者にとって「転倒」はリスクの高い事故になります。
骨折をして手術をしたり、ギプスを巻かなければいけない状況になろうものなら大変。
しばらくは動けなくなるので、あっという間に筋力が低下してしまいます。
いざ完治! となっても元どおりの生活を送ることが難しくなってしまうことが多く、最悪そのまま寝たきりになる可能性もあります。
転倒は私たち介護士も苦める
利用者さんが転倒してしまうと利用者さん本人が痛い思いや辛い思いをするのはもちろんですが私たち介護士も苦しむことになります。
転倒させてしまった罪悪感…。
骨折させてしまった罪悪感…。
それだけでなく、完治して施設に戻ってきたときのADLの変化にも悩まされることになります。
骨折による入院の場合は2週間ほどの病院生活。
病院では治療が優先なので最低限のリハビリしかしてくれていないことがほとんどです。
食事とトイレ以外は寝たきりなんてことザラです。
入院前は歩いていた利用者さんが、ヨロヨロ歩行になってかえってきた…
入院前にヨロヨロ歩いていた利用者さんが、立位がやっとやっとだ…
なんて風に、これまでの状態とは違う状態になっちゃってるんですね。
歩行状態だけでなく食事の形態も変わっていたり、認知症の進行が一気に進んでいたり、利用者さんにとっても私たち介護職にとってもいいことは全くナシです。
なので防げる転倒は防ぐべきなのです。
そして防ぐための工夫をしなければいけないのです。
転倒を防ぐには転倒の原因を探るべし!
漠然と「転ばせないように」といったところで転倒を防ぐことはできません。
うちの施設で過去に、何度も転倒を繰り返す利用者さんがいたのですが(幸いにも骨折していないのですが)報告書の対策が「きちんと見守りをする」でした。
ふざけるんじゃない ですよね。
きちんと見守りって何でしょう?
夜勤中ずーっと巡視に回り続けるおつもりですか?
起こってしまった事故はもうどうしようもないですが、なぜその事故が起きたのかきちんと原因を突き止めてないから「きちんと見守りをする」なんて具体性のない対策になっちゃうんですよ。
夜間の転倒の外的要因と対策
転倒の原因の1つは「環境」です。
転倒しやすい環境になっていないかを、いまいちどチェックしてみましょう。
お部屋にうっすら灯を
夜間、室内が真っ暗だとトイレに起きたときに足元が見えにくいため転びやすくなります。
常夜灯をつけておいたり、コンセントに差しておくだけでつく足元灯をつけるなどを検討しましょう。
真っ暗じゃないと眠れない利用者さんの場合は、
寝静まったあとの巡視のときに常夜灯に切り替えるのがおすすめです。
段差はないか
高齢者はびっくりするほどちょとした段差でつまづきます。
何もないところで転ぶこともあるくらいなので、床とじゅうたんの段差や敷居などにも気を付けましょう。
あとは、電化製品などのコード類も危ないです。
お部屋だけでなく、共有スペースにおいてもトイレまでの動線にあたるところに関しては特に注意です。
手すりはあるか
ベットからお部屋の出口まで、お部屋からトイレまで行く動線に手すりはありますか?
わたしたち若者でも寝起きに立ち上がるとフラッとしますよね。
ちょっとつかまれるところがあるだけで安心ですね。
ベットの高さは適切か
ベットの高さが高すぎたり低すぎたりしませんか?低すぎて立ち上がるときに変な力が必要だったり、逆に高すぎてずり落ちてしまったりすることがないか確認して利用者さんの身体状況にあった高さに合わせておきましょう。
転倒しにくい靴下や靴を選んでいるか
寒いから…と靴下をはいたまま寝ちゃっていませんか?寝るときは脱ぐ!を徹底していただくか靴をすぐに履けるようにベットサイドに置いておきましょう。
また、高齢者は足があがりにくくてすり足になりやすいのでつま先が反り返るような構造の靴にすると歩き出しがスムーズになります。
自宅同じような感覚で施設でスリッパをはいている人も見かけますが、かかとがカバーできないので脱げやすいしすべりやすくて危ないです。
靴底や足裏に滑り止めが付いているタイプの介護用の靴をご家族に用意してもらいましょう。
自分で簡単に脱いだり履いたりできるようにマジックテープやチャック付きのものがおすすめです。
夜間の転倒の内的要因と対策
2つめの転倒の原因は「加齢」「病気」「薬」などの利用者さんの身体の状態によるものです。
リハビリにて筋力アップ
高齢になると筋力が低下していくことで、歩くスピードが遅くなり歩幅も小さくなっていきます。
また、神経と筋肉の連携も悪くなるのでバランスが悪くなって足の感覚も鈍ってつまづきやすくなります。
私たちはつまづいても、おっとっとと姿勢を持ち直すことが可能ですが筋力やバランス力が低下した高齢者は大きな姿勢のゆれに耐えられずそのまま転倒に至るわけです。
難しいリハビリをしなくても、歩行訓練だったり昇降訓練を毎日10回コツコツ継続しているだけでも全然違いますよ。
薬の副作用の確認
高齢者はたくさんの薬を飲んでいる人が多いです。
血圧をさげる薬や、睡眠導入剤、抗精神病薬は多くの高齢者に処方があるお薬ですが、これらは副作用でで足元のふらつきや眠気などが出やすくなります。
お薬の薬情にも記載があると思いますが高齢者は内臓が弱っているので副作用が出やすいので注意が必要です。お薬の追加や変更があった場合は特に気を付ける必要があります。
ぐっすり眠れるような工夫
心配事や不安ごとがあるとぐっすり眠ることができず何度も起きてしまい転倒につながることがあります。
排せつの失敗を心配していたり翌日の朝食を心配しているのであれば安心できる声かけをしてあげましょう。
また、目的もなく夜間頻回に目をさまし起きてくるのであれば、夜にはぐっすり休めるように日中の活動量を増やすのもおすすめです。
その他の転倒対策
転倒しそうな状況であろうとなかろうと利用者さんの行動を見守るのは私たちの職務です。
手や口は出さなくても、利用者さんの今を把握している必要がありますよね。
特に転倒リスクの高い利用者さんに対しては
「今お部屋から出てきてトイレに行った」という所から見ていてはダメですよね。
お部屋の中で転んでしまうかもしれませんから。
特に転倒リスクの高い利用者さんの場合、
ベットから起き上がろうとしているところから気付いて見守っていなければいけません。
そのためにどうするか。
センサーをつける
床式離床センサー(マットセンサー)
ベットサイドに設置しておくと、起き上がって足を下ろして体重がかかるとセンサーが反応する装置です。
背中式離床センサー(ベッドセンサー)
ベットの背中のところに設置して、上半身がベットから離れたとき(起き上がったとき)にセンサーが反応する装置です。一人で立ち上がると危ない利用者さんにおすすめです。
マットセンサーよりも早く利用者さんの動きに気が付き見守りに入ることができます。
鈴をつかう
利用者さんの靴や掛布団に鈴をつけておけば、靴を履こうとしたときや起き上がろうとしたときに鈴が鳴って気がつくことができます。
鈴をつけるという行為は賛否両論で身体拘束に該当するとされる場合もあるようです。
わたしの施設でも意見がわかれたのですが、管理者が管轄の保険組合に問い合わせて確認をしたみたいです。家族を含めて話し合いの場を設けて、利用者さんの身体状況と転倒リスクを説明し、なぜ鈴が必要なのか使用目的をお話しして許可をいただき、ケアプランに反映させています。
居室の扉をあけておく
こちらも賛否両論の対応です。
夜間帯は利用者さんは各自のお部屋で眠っていて、職員は共有スペースで待機(定期的に巡視)しているわけですが、転倒リスクの高い利用者さんのお部屋の扉を少しだけあけておきます。
部屋の中が見える位置に職員が待機していれば、起き上がろうとしたら気が付けますし巡視のときも前を通ったらチラっとのぞいてこまめに確認することができます。
居室はプライベートスペースなので職員の都合で開けっ放しにするのは基本NGです。
ただ、転倒リスクが高い利用者さんにに関しては、ご家族さまと相談しケアプランに反映させればうちの施設はOKになっています。さすがに全開にはせず半開の半分ほどだけ開けている感じです。
まとめ
利用者さんの状態は日々変化します。
昨日と今日の状態が違えば、朝と夜の状態も違います。
日ごろから利用者さんの状況をきちんと把握して
昼より夜のほうが転倒が起きやすいことを意識しておくだけでも
わたしたちの動きは変わります。
ただ見守りをするのではなく転倒の原因をきちんと把握して、
どうすれば防げるのか具体的な対策を練っていきましょう!
利用者ひとりひとりによって転倒の原因が違うはずです。
それぞれの利用者さんに合わせた対策を今からしておけば防げる事故はたくさんあるのではないでしょうか。