認知症の異食行動の対応と防止策
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認知症の異食行動の対応ともしもを防ぐ防止策

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

認知症の異食行動の対応

認知症の利用者さんが
洗面所においてある石けんを食べそうになった…

口の中で何かモグモグしてると思ったら
ボタンをキャンディーみたいにしてなめていた…

あなたにも、こんな経験ありませんか?
窒息しなくてよかった…と、とりあえずホッとはするけど
まさかの異食には本当にビックリしちゃいますよね。

なんで食べ物じゃないものを食べちゃうの?
どうすれば食べ物じゃないもの食べないようにできるの?
もし発見が遅れて窒息しちゃったらどうしたらいいの?

なんて不安が尽きないと思います。

ここでは、認知症の利用者さんがどうして異食してしまうのか、
どうすれば異食を防ぐことができるのかをまとめています。

また、ないにこしたことはありませんが、
もしもの時の対応も書いているので頭にいれておきましょう。

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異食が起こる原因

認知症がすすみ中期以降になると、
食べ物ではないものを口に入れる「異食」という症状がみられることがあります。

冒頭に書いたように、石けんやボタン以外にも
ビニール袋やティッシュや葉っぱを口に入れたり、洗剤を飲んでしまったり…

これは、認知症の進行が進んで、認知機能が低下することで
目の前にあるものが食べ物かどうかの判断ができなくなることが原因のひとつです。

食べ物を食べ物と認識できない「失認」ですね。

目の前に置いてある「バナナ」を知ってるけど、バナナを見てもバナナだとわからない状態です。
おいしいバナナを口に入れても、それがバナナだという知識と結びつかないんですね。

だから、ボタンを見てもボタンであることがわからないですし
口に入れてもボタンであると判断できないので、吐き出すことなく飲み込もうとしちゃうわけです。

 

食べ物だと思っている

認知機能が低下すると、食べ物に似ているものを食べ物だと認識してしまうことがあります。
それを「誤認」といいます。
誤った認識をしてしまう、という意味ですね。

例えば、目の前にある観葉植物の葉っぱを、何かの野菜だと思って口に入れてしまったり、丸まったティッシュをおまんじゅうだと思って口に入れてしまったりしちゃうのです。

普通、口に入れたら気づくでしょ!と思うのですが、
認知症の人は味覚や嗅覚も低下しているので違うということに気がつくことができないのです。

食事の時間だと思っている

認知症の人は、すべてがわからなくなっているわけではなく、わかることもたくさんあります。

なので、いつも食事をしている時間だったり、いつも食事をしている席に座ることで
日々の身についている習慣から「食事をするのかな」と思うわけです。

そんなときにテーブルの上に、丸まったティッシュがあろうものなら
「食べる状況だ」と認識してしまうのです。

お腹がすいている

認知症になって脳の機能が低下すると、空腹を感じやすくなります。
お腹がすいているときに食べ物と間違えやすいものが近くにあると口に入れてしまうこともあります。

異食が起きないようにするためにできること

認知症の利用者さんが間違ってなんでも口にしないようにするために、
わたしたち介護職員にできることはたくさんあります。

環境を整える

ごちゃごちゃとなんでも置いてある環境はリスクが高くなります。
利用者さんが口に入れると危ないものは、きちんと片づけておきましょう。

危ないからといってなんでもかんでも取り上げてしまうのはよくないので
何が起こるかわからないという意識をもって見守ることが大切です。

共有スペースの場合は、職員も気にかけながら仕事ができますが
個室の場合は異食をしてしまったら、発見が遅くれてしまいますよね。

お部屋の中も片づけられるものは片づけて
ティッシュなどの生活用品も
必要なときに取り出せるような所にうつしておくといいです。

空腹の時間をつくらない

認知力の低下にくわえて、満腹中枢に障害が起こると
常にお腹がすいている状態になります。

ご飯をたべても食べてもお腹がふくれないうえに
短期記憶障害でご飯を食べたことも忘れてしまうため
その辺りにある、食べ物っぽいものを口に入れてしまうこともあります。

この場合は1日3食を小分けして1日5食にするなどして
食事の回数を増やしたり、小さなおにぎりやゼリーなどのスイーツを提供したりして
対応すると改善する場合があります。

そばにいてあげる

認知症の利用者さんは、不安やストレスを感じるとBPSDの症状が出やすくなります。

職員が忙しくバタバタして、だれも相手にせず独りぼっちにさせていると
不安やストレスを感じて異食につながることがあります。

実際に、異食は職員がいないときに起こることがほとんどじゃないですか?

職員がそばにいるときに、何かをパクっと食べることないですよね?

何かを口に入れようとしているのを見つけて慌てて駆け寄ったり、
口をモグモグしているのを見つけて確認したらティッシュを食べていたという経緯が多いと思います。

精神科を受診する

1回、2回だけではなく、異食が毎日のように続く場合は
認知症の専門医を受診することをおすすめします。

もちろん私たちでできる対応はするべきですが、
介護の力でできることは限られています。

先生のアドバイスをもらったり、薬物療法を織り交ぜてのケアも検討しましょう。

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もし、異食してしまったら

どんなに気を付けていても異食が起こるときは起きてしまいます。

わたしの見守りは完璧だから絶対にありえない!
そう思う人もいるかもしれませんが、いつ何が起こるかわからないので
万が一の場合の対応方法はきちんと覚えておきましょう。

・口の中を確認する

まず最初に確認するのは口の中です。
何を口にいれたのかを確認します。

まだモグモグしているなら、取り出せる可能性があります。

何を食べたかわからないので慌てて口の中に指を入れてかき出してしまいがちですが
急にグッと口に手を入れて取り出そうとするのはNGです。

慌てる気持ちはわかりますが、
利用者さんには、今自分が変なものを口に入れてることも
職員があせっていることも全く関係ないのです。

急に口をこじあけられたらイヤな気持ちになりますし
逆にあわてて飲み込んでしまったり、抵抗してあなたの指を嚙むかもしれません。

なので、冷静に落ち着いていつもどおり平常心で
「こっちのほうがおいしいですよ」と他の食べ物をを用意したり
「歯磨きにいきましょう」と声をかけて口の中を確認します。

「ちょっと味がうすかったでしょう?」とか
「傷んでるから出したほうがいいですよ」などの声かけで
自分から吐き出してもらえる方向にもっていきましょう。

絶対に怒らない

利用者さんは、私たち介護職員を
困らせようとして異食をしているわけではありません。

「ちょっとー!何食べたの?!」
「早くだして!」などと大きな声を出したり怒ったりすると
開けられる口も開けられなくなります。

強く注意したり無理やり取り上げたりすることで
逆に興奮して暴れたりすることもあります。

利用者さんには、自分の今の状況が理解できていないので
職員の言葉や態度に不安やストレスを感じてしまいます。

受診する

異食があった場合は必ず医療機関を受診するようにしましょう。

口の中からボタンが出てきた。
取り出せたのでよかった…とホッとする気持ちはわかりますが
もしかしたら2つ口に入れて1つは飲み込んでいるかもしれません。

確実に口に入れたのが1つだと断言できないのであれば
電話でも構わないので病院に電話して指示を仰ぎましょう。

洗剤やタバコなどを飲み込んでしまった場合は
よかれとおもって行った応急処置が、やってはいけない行為だった…
ということになりかねません。

飲んでしまった洗剤を無理やり吐かせて
食道の粘膜を傷つけてしまった…

飲んでしまったタバコを薄めようと
水をたくさんのませたけど、逆に吸収を促進させてしまったみたい…

なんてふうに、よくない対応をしないためにも
何かを飲み込んでしまったときには自己判断はせずに受診をしましょう。

まとめ

異食行動は、ある日突然まさかのときに起こります。
認知症の利用者さんは想定外の状況で想定外のものを口に入れてしまいます。

日ごろからまわりを片づけて、まさかの事態にならぬよう気を張ってケアをしていても
よりそってケアをしていても、起こることは起こるべくして起こります。

防げる異食は防ぐべきですが、
起こってしまった異食から利用者さんを守るための行動も心得ておかないといけないですね!

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