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利用者さんの徘徊に毎日大変な思いをしている。
玄関が見えないところにあるから
そのまま施設の外に出て行っちゃうんじゃないか心配…。
足が悪い利用者さんだから
いつか転倒してケガしちゃうんじゃないか心配…
あなたはこのようなお悩みをお持ちではありませんか?
認知症の利用者さんの徘徊は見守りをしていないと
何が起こるかわからないから目を離せないので通常業務があると本当に大変ですよね。
他の利用者さんの介助もあるし、その他の仕事もたくさんあるのに
たった一人の利用者さんにずっと手を取られているわけにはいかないですし
認知症だから仕方ないとは思っていても意思疎通できない状況に
焦ってしまったり、イライラしてしまうんですよね。
かといって、放っておくこともできないし…
ここでは、このような悩みを解決すべく
認知症の利用者さんの徘徊の原因や対応方法を紹介しています。
認知症の徘徊はどんな症状?
「徘徊」は認知症の周辺症状のひとつで家や施設の中だけでなく、
外に出てあてもなくうろうろと歩き回る行動のことをいいます。
私たちから見ると意味もなくウロウロ歩き回っているだけに見えますが
原因がちゃんとあって、本人にすれば目的があっての行動だといわれています。
迷惑をかけようとして歩き回っているのではなく、私たちが出かけようと思って外に行ったりトイレに行こうと思って部屋の中を歩いたりするのと同じように理由があって行動しているわけです。
認知症の徘徊の原因
記憶障害や見当識障害
認知症になると記憶をなくしてしまったり、周囲の人や状況、時間や場所などを理解する力が失われていきます。
記憶をなくしてしまう記憶障害によって、
何をしようとしたかすっかり忘れてしまいます。
メガネを取りに行こうと思ったけど、置き場所が分からなくなってウロウロする。
新聞を探しているはずなのに何をしてるか分からなくなってウロウロする。
など、記憶障害によって当初の目的をわすれてしまうことで徘徊となってしまいます。
施設の場合は、一人で外に出ることは基本的にないので比較的安心ですが
在宅介護では徘徊でどこに行ったかわからなくなって困っているという話をよく耳にします。
見当識障害によって今どこにいるかわからなくなるため
家がどこかわからなくなり迷子になっったりしてしまうのです。
家にいるのに「家に帰る」と言って外出して、家がわからずウロウロする
買い物に出かけたが家が分からなくなり帰れなくなる
などがよくある話です。
施設の場合でも、まだ施設の環境に慣れていないときなどには
「家に帰ります」と帰宅願望が現れたり、
家に帰ろうと玄関を探してウロウロしている姿がよく見受けられます。
不安やストレスで居心地が悪い
引っ越しや施設入所などで、環境が変わることで認知症の人は混乱します。
住み慣れた自宅から、慣れない場所へと環境がかわることで
不安やストレスを感じて徘徊につながることがあります。
新しい家や環境になじむことができず前の家に帰ろうとしたり
自分の居場所じゃないと感じて安心できる場所を探してウロウロするように。
住環境のみならず、精神的な部分からも徘徊につながる原因があります。
いつもいる家族や介護職員の顔を認識するのが難しくなると
毎日会っていたとしても本人にとっては「初めて会う人」です。
周りに知らない人ばかりで不安…
スタッフに不満がある…
ひとりぼっちで不安…
という気持ちになり、その場から逃れようと徘徊につながる場合もあります。
「居心地の悪いところにいたくない」という気持ちから
居心地のいい場所を探すために行動し、それが結果的に徘徊になってしいます。
前頭側頭型認知症
徘徊が起こる原因は不安や混乱などのBPSDによるものが多いですが
前頭側頭型認知症が原因で起こる徘徊も存在します。
決まった時間になると施設内をぐるりと1周したり、
毎日散歩に行くため大雪でも行こうとしたりするのが特徴です。
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉がちぢんでしまっている認知症のことを指し
「同じ行動を繰りかえす」という症状が現れます。
認知症には様々な種類がありますが
多くの場合はその種類を特定する精密な検査は行っていません。
ひとくくりに「認知症」と診断されることが多いので
明らかに同じ行動を繰り返す症状がある場合は前頭側頭型認知症なのかもしれません。
徘徊にはどう対応すればいいの?
今から家に帰ろうとしたときに
「ダメ」と言われたらあなたはどんな気持ちになりますか?
認知症の人の徘徊は、
私たちからすると当てもなくウロウロする変な行動かもしれませんが
本人からすると理由や目的のある行動なので
徘徊を止めることは難しいことになります。
わたしたちも家に帰るという目的があって早く帰りたいときに
帰らないで!と言われても「え…帰るよ!」っとなりますよね。
「用事があるからちょっと待ってて」「これをやってからにしよう」と言われれば
状況を理解して、今帰ることを我慢することができますが
認知症は帰りたいと思ったら帰りたいし
状況が理解できないので我慢することができません。
行動を止めようとしたり下手にごまかしたりすると
逆に落ち着きがなくなったり、興奮して暴力や暴言につながることもあります。
では、どうしたらいいのでしょうか。
怒らない
まず、徘徊をしている利用者さんに
「だーかーらー」とか「いい加減にして」とか「勝手にいかないで」などと
繰り返す徘徊にイライラした口調で声をかけるのはダメです。
強い口調で声をかけられるのは誰だって嫌ですし恐怖心を感じてしまいます。
認知症の人はすぐに忘れてしまうとはいっても
出来事はわすれても感情の部分はしっかり覚えています。
ここにいる人はイヤだ、この場所はイヤだと認識してしまうことで
負の感情が蓄積されていき徘徊がひどくなることもあります。
安心できる場所(たとえば自宅)に行きたい気持ちが強くなり
余計に徘徊につながってしまう可能性が高くなります。
また、行動を制限するような声かけをすることで
不安や焦燥を招くことになり徘徊症状を悪化させてしまいます。
最悪の場合、被害妄想など別の周辺症状が現れて
より介護を行うのが大変になってしまうこともあります。
理由を聞いてみる
「どうされました?」と徘徊する理由を担当直入に聞いてみるのが1番です。
ちんぷんかんぷんな事を言ったとしても
耳を傾けて話をきいてあげることも大切なことになります。
もちろん、明確な答えが返ってくることは少ないと思います。
うまく話しができない利用者さんだったとしても
言葉がつまって何も言えなくても、
何かヒントとなる単語や仕草が隠されているかもしれません。
トイレの場所が分からなくて探しているのかもしれません。
眠たくて部屋( 家)を探しているのかもしれません。
自宅にいる家族が心配なのかもしれません。
ご飯の仕度をしなければいけないと思っているのかもしれません。
コミュニケーションをとることで利用者さんが
今どんな心理なのか、何が目的なのかに気づくことができて
原因を取り除いてあげられますよね。
気をそらす
認知症の人は今起こっている出来事をすぐに忘れてしまいます。
利用者さんの徘徊の目的である「何か」を
他のものに気をそらせて忘れるのをまつのも一つの対応方法です。
忘れるスパンは人によって違うので
うまくタイミングを見計らう必要がありますが
徘徊を無理にやめさせることは
本人にとってもスタッフにとってもストレスとなります。
なので、徘徊を止めようとするのではなく
他のことに気をそらせてあげるのです。
例えば、家を探してウロウロしている利用者さんには
「帰る前にトイレを済ませていきましょう」
「疲れたでしょう、少し休憩してお茶でもどうです?」
などと別のことに誘ってみるのです。
他のことをしているうちに、家を探していたこと自体を忘れてしまい
結果的に徘徊がおさまっていくという流れになります。
そのまま歩かせてあげる
徘徊をやめさせようとするのではく
そのまま歩かせてあげるというのもオススメです。
事故やケガのリスクがあるのでできるだけ職員が
付き添ってあげられることがベストではありますが
転倒リスクがない元気な利用者さんであれば
危険がないかそっと見守るだけにして自由に歩いてもらっていいと思います。
外に出る場合は事故や迷子の危険があるので
必ず職員が付き添って一緒に散歩をしてくるといいですね。
外出は、気分転換になりますし
徘徊の原因である不安やストレスの解消にもなります。
他の利用者さんも誘ってみんなで散歩に行けるとより楽しくなるかもしれません。
なにより本人がやりたいように行動できることで
利用者さん本人の気持ちも落ち着いてくることでしょう。
徘徊を防ぐためにできること
徘徊は不安な気持ちからくる「居心地が悪い」
という状態が原因となることが多いため居心地のいい環境を作ってあげることが大切です。
利用者さんが不安な気持ちを感じないように
傍にいてあげたりコミュニケーションをとって
充実した安心できる毎日となるようケアを行っていく必要があります。
趣味や仕事などの役割をみつける
忙しくしているのはスタッフだけで利用者さんは何もせずにジーっと座っているだけだと
なぜここに居るんだろう、何のためにここに居るんだろうと不安になります。
話し相手もおらず、何もすることがない状態だと
「ここは自分がいる場所じゃない」「なんでここにいるの?」「ここはどこ?」と不安に感じ
外に出ようと徘徊になってしまいます。
なので、何か集中できることや充実感のある作業をしてもらうようにします。
たとえば、比較的に簡単にできることといえば
洗たくや掃除を手伝ってもらったり料理を手伝ってもらったり
食器を並べてもらったり、洗った食器をふいてもらったりですね。
人の役に立つことができているという「役割」をもつことで
ここが自分の居場所であると思える手助けになります。
その人に合った出来る「何か」を一緒にみつけてあげましょう。
適度に運動する
誰でも同じところで一日中じーっとしているのは辛いですよね。
パワーがありあまって徘徊につながることもあるので
毎日適度な運動をしてエネルギーを消費しましょう。
適度な運動は、気持ちがいい充実感や疲労感を味わえるので
こころのモヤモヤも晴れて徘徊が改善されることもあります。
簡単な体操やお散歩をする機会を増やすことで
足腰も鍛えられてリハビリにもつながります。
まとめ
認知症の利用者さんの徘徊は理由があっての行動であることを
わたしたちがきちんと理解して寄り添ってあげましょう。
また、言動や仕草から徘徊の原因をさぐり
その人に合った役割をもってもらい充実して安心して暮らせる毎日を
送ることができるように手助けをしていきましょう。