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若年性認知症ってよく聞く認知症とは一体何が違うの?
漢字をみると若い人の認知症ってイメージだけど、高齢者がなる認知症と何か違いがあるの?
なんて疑問を感じていませんか?
ここでは若年性認知症の特徴や症状についてまとめています。
また、若年性認知症を発症することで起こり得るさまざまなリスクについてもお話ししています。
若年性認知症の特徴とは
若年性認知症とは、その名の通り若くして発症する認知症のことを言います。
認知症というとお年寄りの病気というイメージがありますが若い世代でも発症する病気なのです。
65歳未満で発症した認知症を若年性認知症と呼ぶのですが
こまかく分けると18歳から39歳までに発症する認知症を「若年期認知症」
40歳から64歳に発症する認知症を「初老期認知症」といい、その総称を「若年性認知症」と呼んでいます。
厚生労働省の調査によると18歳から64歳の10万人当たり若年性認知症者数は47.6人、
全国に若年性認知症者数は3.78万人いると発表されています。
若い世代の認知症と、高齢者が発症する認知症では
ただ単に、年齢で区分されているだけであって症状には変わりはないのですが
若いだけに暮らしている環境が高齢者とは違うため様々な問題が生じてくることとなります。
若年性認知症の原因
高齢者の認知症で多くみられるのがアルツハイマー型認知症ですが
若年性認知症の場合はアルツハイマー型認知症よりも脳血管性認知症のほうが多いのが特徴です。
脳梗塞や動脈硬化、くも膜下出血等の疾患によって脳細胞に障害を受けることで現れる認知症なので
生活習慣病が発症の引き金になることが多いと言われています。
不規則な生活習慣、高血圧、糖尿病・高コレステロール・アルコールの過剰摂取、喫煙、ストレス等が
病気になるリスクを高めてしまうわけです。
若年性認知症の症状
若年性認知症の症状は、高齢者の認知症の症状とほぼ違いはありません。
脳の細胞に障害をうけて脳の働きが低下することで認知機能に障害が出るようになります。
・記憶障害
新しいことが覚えにくくなり、実際に起きた出来事を記憶することが難しくなります。
自分が若いころの記憶など昔のことは比較的覚えているのに、昨日の打ち合わせを忘れてしまったり
同じ内容の電話を繰り返したり、どこに片づけたか覚えてないなど、いわゆる「もの忘れ」です。
・見当識障害
今日がいつで、ここがどこか、今の自分の置かれている譲許を把握するのが難しくなります。
約束の時間を守れなかったり予定通りに行動するのが難しくなります。
また、道にまよったり遠くに歩いて出かけようとするなどの症状も見られます。
人に対する見当識障害が出てくると、お客さんがお客さんだとわからなくなってしまうこともあります。
・理解力・判断力の低下
情報を処理する能力が低下するので1度に2つの事を言われると混乱したり、
ATMや自動改札機など目に見えないものに対してどうしたらいいのか分からなくなります。
レジでの計算がスムーズでなくなるなど瞬時に判断することが困難になります。
ひどくなると、車が近づいてきても気が付かなかったり交通ルールを守った行動もできなくなってしまいます。
・実行機能障害
慣れているはずの料理ができなくなったり、切符の買い方が分からなくなったり
生活や仕事の中で様々な手順を順を追って行うことが難しくなります。
炊飯器のスイッチを押すことが出来ても、炊飯器のスイッチを押している間におかずを作るなど
段取りを考えて手順を考えて行動するのができなくなってしまいます。
・失語
言葉の理解が難しくなります。自分が思っている単語を言葉として表現できなくなってきます。
「あれ」とか「それ」とか取り繕ったような表現が目立つようになります。
・失行、失認
失行では、ボタンをかけちがえて着てしまうなど今まで当たり前にできていたことが身体の障害がなにのに
できなくなってしまいます。お箸を上手く使えなくなるのも失行にあたります。
失認は間違った認識をしてしまうことを言います。子どもが犬を撫でているのを見ていじめていると認識したり、毎日会ってる人を知らない人と認識したりしてしまいます。
若年性認知症は発見が遅れる
若年性認知症の初発症状は、性格の変化・言葉がでにくいといった症状から始まることがあるため、うつ、精神的ストレス、更年期障害などと初期診断を間違えられやすく、精神症状で始まった際にはしばらく経過を観察しないと診断がつかないことがあります。
一方では仕事をしている世代でもあり、仕事がうまくこなせなくなることで、早い段階で異常に気がつかれることも特徴です。
若年性認知症は、社会の主要な担い手として期待される年代に発症することから、本人も家族も認知症であることをなかなか受け入れられないことが少なくないと言われます。高齢期の認知症に比べて、世の中の認知度や社会の理解や支援はまだまだ十分とはいえません。
年齢の若さから、本人も周囲も当初は認知症と気づかず、単に疲れているだけだ、体調が悪いなどと思い込んでしまうため、発見が遅れる傾向があり、医療機関でもうつ病や更年期障害などと診断されやすいため、正確な実態がなかなかつかみづらい疾病です。
まさか自分が・家族が若年性アルツハイマーになるなんて…と最初に疑うことがないため早期発見がされにくく、世間としても認知度が低い病気といえます。
若年性認知症特有の困難
若年性認知症は、基本的に高齢者の認知症で見られる中核症状や周辺症状と大差はありません。しかし、若い分だけ体力はあります。感情が不安定なときは高齢者に比べ声も大きく、力も強いですし、移動のスピードも速いため、徘徊などが起きると短時間で遠くまで行ってしまうことも考えられます。そのためケアする側の負担や苦労も大きくなってしまうのです。
また、本人や配偶者が働き盛りの現役世代なので認知症になって仕事を失うと経済的に困る可能性が高くなります。
多くの場合、会社で責任ある仕事をこなしている人、一家の大黒柱を担っている人、成人前の子どもがいる人などの発症なので、本人はもちろん家族も精神的な負担が大きくなります。
若年性認知症は社会的にも大きな問題ですが、企業や医療・介護の現場でもまだ認識が不足している現状です。