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「デイサービスに行きたくない」と強く拒否される場面に、介護者やケアマネージャーとしてどのように対応すればよいか悩む方は多いでしょう。利用者がデイサービスを拒否する理由はさまざまですが、その背景には多くの場合、心の内に抱える不安やこだわりがあります。
厚生労働省の調査によると、2020年時点でデイサービスを利用する高齢者のうち約30%が、初めての利用前に何らかの拒否感を示したとされています。しかし、適切なアプローチにより、最初の拒否感を乗り越え、満足度の高い利用に至ったケースも多数報告されています。
本記事では、デイサービスを拒否する利用者の心理を理解し、適切な声掛けや対応策を通じて信頼関係を築く方法を詳しく解説します。
デイサービス拒否の心理とその背景
拒否の主な理由とは?
デイサービスを拒否する理由には、以下のような心理が隠れていることが多いです。
プライドの維持
高齢者が「世話をされる年齢ではない」と感じることがあります。特に男性の場合、「自分はまだしっかりしている」という気持ちが強い傾向があります。
不安感
初めての場所や人と接することへの不安が根底にあるケースが多いです。「施設で何をするのかわからない」という情報不足も、不安感を強めます。
体調面の懸念
「疲れる」「移動が大変」といった体調への配慮が求められるケースもあります。これらの訴えは、体力の衰えや健康状態への自信のなさが背景にある場合もあります。
先入観による抵抗
「デイサービスは老人ホームのようで嫌だ」という漠然としたイメージが拒否感を生むこともあります。過去に利用した施設での悪い経験が影響していることもあります。
信頼関係を築くための効果的な声掛けとは
デイサービスを拒否する利用者への声掛けの基本ルール
否定しないこと
「なんで行きたくないの?」と問い詰めるのではなく、「行きたくない気持ちを教えてくれる?」と柔らかい表現を使いましょう。
利用者のペースに合わせること
無理に進めるのではなく、「一度見に行くだけでもいいよ」とハードルを下げることが効果的です。
感情に共感すること
「初めての場所は不安ですよね」「気持ちはよくわかります」と共感の言葉を添えることで、利用者は心を開きやすくなります。
具体例:拒否理由別の声掛け方法

疲れるから嫌だ。。
と言われたら

休憩できるスペースがあるし、疲れたらすぐ帰れるよ。

と言われたら
知らない人ばかりだから怖い。

最初はスタッフさんと一緒に過ごせるから安心してくださいね。
さらに、過去に成功した声掛けの例として、あるケアマネージャーが

散歩がてら近くのデイサービスを見に行くだけでいいよ。
と誘ったところ、利用者が施設の雰囲気を気に入り、次回の参加を決意したケースがあります。
現場で使える柔軟な対応策
デイサービス利用のメリットを自然に伝える
利用者がメリットを実感できるよう、以下のように伝えましょう
「他の人と一緒に体操すると気分がスッキリするんですよ。」
「美味しいお昼ご飯も楽しめます。」
家族との連携で効果を高める方法
利用者が家族の意向を重視する場合、家族との連携が重要です。たとえば、家族が初回利用に付き添うことで安心感を与えたり、デイサービスでの楽しそうなエピソードを家庭で共有することで、ポジティブなイメージを築けます。
デイサービス拒否への声掛け対応の成功例と失敗例
成功例:信頼関係の構築が利用を後押し
70代の男性が「デイサービスは老人の集まり」と拒否していましたが、介護スタッフが趣味の釣りについて話を広げ、施設に釣り好きの仲間がいることを伝えると、一気に利用への意欲が高まりました。
失敗例:強引な誘導が逆効果に
一方で、「行かないと体力が落ちるよ」と無理に説得したケースでは、利用者がかえって頑なになり、関係修復に時間がかかってしまいました。
男性特有の拒否への対応策
プライドを尊重した声掛け
「皆さんに頼られる先輩として来ていただけると助かります」など、役割を持たせるアプローチが有効です。
実際に、元教師だった男性に「他の利用者に教えてほしいことがある」と声を掛けたところ、教えることが好きな性格が功を奏し、利用を始めた例があります。
趣味に合わせた提案
釣り、将棋、囲碁、園芸など、男性に人気のある趣味をアピールする。
「デイサービスには釣り好きの方が集まるグループがあります」と具体的に伝えると、共通の趣味があることで安心感を得る男性もいます。
「見学だけ」を提案する
男性は「最初から参加」を求められると抵抗感が強くなることがあります。「見学だけでもいいですよ」と伝え、まずは施設の雰囲気を見てもらうことから始めましょう。
実際、見学に参加した男性が「思ったより楽しい場所だった」と好印象を持ち、次回からの利用に前向きになった例があります。
家族との連携で効果を高める
男性の場合、家族、とりわけ配偶者の言葉が影響力を持つことが多いです。例えば、奥様が「私もその間、自分の時間ができるから助かるわ」と伝えることで、利用者自身が「家族のためになるなら」と納得するケースがあります。

成功した男性のケース
70代の元サラリーマンの男性が、長年の職場仲間の話題を持ち出されたことで興味を示しました。デイサービスで仕事仲間に会える可能性を感じ、「一度顔を出してみるか」と参加を決めた例です。
また、別の例では、囲碁の大会があると聞き、「腕試しがしたい」と利用を開始し、通所を楽しむようになりました。
介護現場での信頼関係がすべての鍵
デイサービスを拒否する利用者の心理には、不安やプライドなどさまざまな要因が隠れています。これを理解し、利用者に寄り添う姿勢が信頼関係を築く第一歩です。
声掛けでは否定せず、利用者のペースを尊重することが重要です。特に男性には趣味や役割を活かしたアプローチが効果的です。また、家族との連携を図ることで、利用者の安心感を高めることもできます。
拒否を乗り越えた先には、利用者の充実した生活と家族の安心があります。信頼を築き、一歩ずつ歩み寄ることで、デイサービスの利用促進が実現します。