この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。
認知症の利用者さんが食事をしたことを忘れてしまって
「ごはんはまだ?」と何度も聞いてくるときの対応に困ってしまった経験はありませんか?
「食べましたよ」と言っても納得してくれなくて
断固として「食べてない」って主張してきて…
挙句の果てには意地悪扱いされて暴言を吐かれたり、泣かれたり…。
かといって余分な食事はもうないし、
何度も食事をさせると健康管理の面でも問題になってくるし…。
一体どうしたらいいのか悩んでしまいますよね。
ここでは、認知症の利用者さんが食事を食べたことを忘れてしまったときに
どのように対応したらいいのかをまとめています。
食べたことを忘れてしまうあるあるエピソード
よくある会話
認知症の介護をしていればきっと誰もが経験したことがあるであろうこのやり取り。
あなたも経験ありませんか?
Aさん)「ちょっと、お昼ごはんはまだかね?」
職員)「Aさん、今食べたところですよ。忘れたのですか?」
Aさん)「え?まだ食べてないです」
職員)「いえいえ、さっき食べてましたよ。おいしいおいしいってお魚食べてたじゃないですか」
Aさん)「食べてません!うそばっかりついて!昼飯をくれないつもり?」
職員)「食べたばかりですよ!」
Aさん)「食べてません!」
職員)「さっきそちらで食べましたよ!」
Aさん)「いいえ、食べてません!飢え死にさせようとしてるの?」
職員)「はぁ…またはじまった…」
Aさん)「うそばっかりついて私をいじめて!」
忘れてしまう原因
上記のような会話をあなたも体験したことがありませんか?
Aさんは実際のところは食事を済ませているので職員は嘘はついていません。
でもAさんは認知症の記憶障害により、食事の記憶がごっそり 無くなってしまっているため
相手が嘘をついていると思ってしまうのです。
Aさんには食事をした記憶が1ミリもないので、どんなに食べたことを伝えてもAさんを納得させることは難しく言えば言うほど、被害妄想や不安な気持ちを煽ってしまうことになります。
そしてあなたのことを「嫌な職員」だと認識し
「嫌な施設」に入っていると認識させてしまいます。
このような対応を繰り返していると、帰宅願望や介護抵抗、暴言・暴力など
他の周辺症状を引き起こしてしまうという悪循環に陥る可能性が高くなってしまいます。
あなたの昨日の夕飯のメニューは何でしたか?
こう聞かれると私たちでもパッと答えることは難しいと思います。
ただ、メニューは覚えていなくても食べたこと自体は覚えていますよね?
ところが認知症の場合は記憶障害によって食べたこと自体を忘れてしまっているのです。
食べたという体験そのものがすっぽり記憶から抜け落ちてしまっているのです。
また、満腹中枢の機能が失われていくためお腹がいっぱいだという感覚も衰えていきます。
どんなにご飯を食べても満腹感を感じにくくなってどんどん食べたくなるのです。
食べた記憶もなくなっている上、
お腹もすいているためより「食べてない」と感覚が増し、訴えも強くなるのです。
食事を食べたことを忘れてしまったときの対応方法
「食べてない」と訴えてくるのは認知症だから仕方ないのですが
思い出すことも理解することも難しい利用者さんに「食べたでしょ」といってもどうしようもありません。
かといって訴えがある度にご飯をあげるのも健康上よくないですよね。
なので、「食べてない」と訴える本人の訴えを
聞いてあげて受け入れてあげることが適切な対応方法になります。
理想の対応方法
Aさん)「ちょっと、お昼ごはんはまだかね?」
職員)「あれ?さっき食べませんでしたか?」
Aさん)「食べてないのよぉ」
職員)「あらまぁ!すいません。今急いで作りますね」
「少し時間がかかるのでお茶でも飲んでお待ちください。」
Aさん)「ありがとう」
~お茶を飲んでもらいながら世間話などをする。~
職員)「ごはんの仕度ができたら呼びますね~」
Aさん)「そう?じゃぁ部屋で少し横になってるよ」
職員)「はーい」
このような感じで、否定せずに訴えを受け入れることで
利用者さんも私たち介護職員も感情的になることなく話をすることがあります。
その内に食べた事を忘れた事を忘れてしまいますし、
再び「食べていない」と訴えてきても、さっきも訴えたことも忘れてしまっていることがほとんどです。
このようなやり取りをしている内に
次の食事時間になり本当にご飯を食べることができるわけです。
他にも「食事は〇時に出来上がります」「何が食べたいですか?」など
食事に関する雑談を交えながら話をすることで
「ごはんを食べていない・食べさせてもらえない」という嫌な気持ちから
「もうすぐ食べられる」といういい気持ちにかわっていきます。
気を付けなければいけないのは
食事とは関係のない話題を振ってしまうことです。
利用者さんはご飯のことで頭がいっぱいなので
違う話をしてごまかそうとすることで逆に怒ってしまう人もいます。
食事のことを考えてくれている人であること、
もうすぐご飯が食べられるという安心感を持ってもらえるようにしましょう。
まとめ
認知症の利用者さんの「食べていない」の訴えがあったときには
食べたことを否定せずにもうすぐ食べられることが期待できる声かけをしていきましょう。
なかなか納得してもらえないときには
おにぎりを握って食べてもらうこともダメなことではありませんが
頻繁に症状がある場合には、
肥満に繋がってしまうので普段の食事の量を減らすなどの工夫をするといいでしょう。